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体&欲求のコントロールに悩む人たちへ。ヒントは心地いいことPart2

前回のブログでは「病気でなければ健康」という価値観を変えることが体づくりの第一歩という話を、「心地よさの発見~高橋和巳~」という本から紹介しました。(あくまでもしつこく昔のタイトルを引用していますw) 今回もこの続きです。

多くのクライアントさんたちから、運動を継続すること、食事に気を使うこと、ダイエット、いわゆる自分を管理するという行為に困難を感じている!と相談を受けます。長期にわたって自分を管理するという行為の成否には、その人の意思の強さとか例えば病気の理解度(糖尿病などの成人病、アルコール依存症などの)とかいうものではなくて、実はその人の持っている健康観が決定的に重要な役割を案じると、この本は言っています。

禁止と命令の健康増進、

それで私たちは本当に変わることができるのか?

病気でないから健康である….という、病気と健康との二分方を土台する価値観でいくと、我慢しないで食べまくっていた元の生活に戻って行けば病気が再熱し、戻らなければ自分の人生はいつまでも楽しみを制限されたストイックな生活となってしまいます。

 

「人間の我慢はそう続くものではない。他からの強制力がない状態で、自分一人の医師だけで欲求制限できるのは、せいぜい三ヶ月、意思の強固な人でも六ヶ月から長くて一年を超えることはない。」

「抑えつけられた自分が様々のきっかけで失敗を演出し、禁欲生活は破綻する。それは人間の欲求の性質として、抑えられた欲求はそれに反発するかのようにさらに力を増して噴出するからだ。私たちの心に浮かぶ様々な欲求は満たされれば自然に消えていくが、逆に力で抑えられた欲求はいつまでも心に留まり、力を増して飛び出そうとする。」

 

欲求…..満たされたないと、さらに大きくブーメランのように返ってくるなんてなんとも末恐ろしい、まるでカルマのようですよね。糖尿病の食事制限や運動療法などで自己管理ができて治療生活に馴染める人は(一生続くので)患者全体の3割だそうです。その次の3割の人達は、何度かの失敗を繰り返しながらも治療を続け、残りの3割は全く管理ができない….のだそうです。この3割、3割、3割という数字はアルコール依存症の場合の回復の割合と同じだそうで、それも偶然とは思えません。著者は、この自己管理ができなかった3分の2の人達は、この患者自身が抱いている健康の価値観が「病気でなければ健康」という価値観だからではないかと考えました。

 

単に病気を治すという目的で

私たちは習慣を変えらえない。

 

「病気でなければ健康」という価値観が、本当は体の中で日々変動している健康状態のレベルを見えないものにしているし、体の中で感じられている心地よさという健康の質を見逃しているのである。

そうです、ここでやっと「心地よさ」が出てきました。健康とは、単に病気にかかっていないということだけではなく、日常生活の中で、どれだけ「心地よさ」を感じられるかどうかだということなんですね。タバコを吸いたい、ご飯をがむしゃらに食べたい、という欲求を超える欲求が、習慣を変えるということではないでしょうか。

 

「心地よさを感じた時には、脳の中には、それに対応した神経伝達物質すなわち、アセチルコリン、セロトニン、ドーパミンなどの化学物質が流れる。その信号は精緻な神経網を通して視床下部や脳下垂体に伝わり、ホルモンの分泌を変え、体の機能を変えていく。そして体は実際により健康になったり、より病気になりやすくなったりするのである。これは最新の神経免疫学の知見である。

心地よさは体を変えるのである。」

 

大切なのは、何が体にいいか、ではなく、

何を体は心地よく感じるかだ。

 

どんな時に心地いい…と感じるか? 徹底的に探っていくといいかもしれないですね。。ボ~ッと公園を歩いている時、窓から入ってきた風が部屋の中を通り過ぎていく時、晩酌の時の一本のビール(飲みすぎた時にも心地いいのか?)、大好きなレストランでの食事(食べすぎた時も心地いいのか?)、そして、体を感じながら適度な運動をした時……。風を感じたり、ビールが美味しく感じられることは楽しいことだ。私たち人間は 、心地いいという感覚に自然と開いていくものです。

「このように働きかけの仕方を心地よさが実現される方向に工夫することが、体を作ることである。「体を作る」とは「よく言われる、体に良いことをする」とか「体を鍛える」ということとは微妙に異なる。体のために肉を減らして魚を食べる、という言い方がされた場合、一般的な言い方の中には、本当は自分はステーキを食べたいのだが、体のことを考えてそれを我慢するというニュアンスが含まれている。この時、私たちの気持ちと体の間には対立が生じている。

体を感じないで健康のために何かを行おうとした時、私たちの気持ちと体がは分離してしまうのである。」

 

体を感じて動くこと。そして自分自信の体で心地いいと感じること。そして、その状態をまた再現したいなとか、少しでも長く続けたいなと思うこと。そうなった時に、そうなった時に、自己管理のためのトレーニングから脱せるのかもしれません。タバコで言えば、タバコを習慣的に考え事しながらスパスパ吸うことをやめて、まず、十分に味わってみて自分の体で感じてみること。自分は、なぜタバコを必要としているのか、体のどのあたりが満足感を得ているのか。自分の欲求が満たされる瞬間を全身で楽しむ。自分の体を感じ続けていることができたならば、欲求が満たされていく瞬間を体験できるそうだ。欲求を満たすということが大切なんですね。

「タバコで満足するカラダを感じていくことがまず大切である。感じて、満ち足りれば、タバコの本数は確実に減っていく。なぜなら、欲求が実現された時、私たちはその欲求を忘れるからである。」

深いですね。何かをやめる時に大切なのは、自分の欲求を抑えることではなくて、自分の欲求を十分に知ること。自分の体を感じることが、自己抑制のファーストステージであるなんて、目からウロコでした。そしてそのより深い欲求は、きっと心地いいものだと信じています!

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すっかりお酒が飲めなくなりました。でも、今の方が、味わってゆっくり楽しめるから、よかったなと思います。。やっと大人のバーとかに行って飲めるように……今がいちばん心地いい…そう思えることは幸せですね。