末端の冷えを解消する、

隅々まで行き渡らせたいもの。

気功をはじめた。

　クラスの始まりは、たいてい、手の平をこすり合わせることから始まる。先生が他愛のない話、いや、身になるお話をして下さり、その間飽きることなく、そして夢中になりすぎることもなく、さり気ない集中力で手をこすり合わせる。手の平、指と指の間、指の指紋のあたり、指の側面と側面、そして手の甲まで。強い刺激でもなく、ゾクゾクっとしてしまうような弱い刺激でもなく、これまた中庸な感じの刺激で。私の感覚では手の皮膚のセンサーを「開いて」いく感じだ。　

　手は酷使され過ぎだ。たとえ、座りっぱなしでパソコン作業をしていても。いつもいつも、ノルマがかかっている。このブログを１時間で書き上げる、プライパンを持ちあげる、クライアントさんの動きを補助する、請求書にハンコを押す……。常に目的に向かっていて、そのプロセスを味わうことはない。なんてかわいそうな子なの。

　と、プロセスに思いっきり想いを馳せながら、手のひらをこすり合わせること数分。動きをゆっくりと止めてみて、手のひら、手の甲、全体を触って感じてみると驚く。すべすべなのだ。そしてもちろん末端まで温かい。毛細血管に血が流れるとはこういうこと！　さらに、しっとり潤いまで感じる。これだけでこんなにまで肌がまるで輝くようになるならば、全身やったらどうなるのだろうか….とドキドキした。

　実は、去年の今頃、右手の調子がものすごく悪くて、約２ヶ月、指先が痺れたままだった。もちろん冷たい。整形外科で理学療法士の方に見てもらったり、漢方まで飲んだけどすぐは治らなかった。結局、手だけに原因があるわけではなく、私の場合は横隔膜からかなり引っ張られたなあというのが自分的推測。しかし、痺れ２ヶ月はきつかった。去年の私に、この魔法を教えてあげたい。

魔法がリアルに変わる瞬間、

「さすさす」が乙女を救う。

　そんな、ある日、親友の子供と一緒に動物園に行こう！ということになった。朝からワクワクだ。さて、行くぞ！と車に乗り込んだ瞬間、可愛い乙女４歳児、まひろちゃんのお腹が痛くなってしまった。おいおい、まだ高速も乗ってないぞ…と、内心、ハラハラした。すると、まひろちゃんは「うん、大丈夫。〝さすさす〟してるから〜〜」とチャイルドシートにうまい具合に斜めに横たわり、苦い顔をしながら、お腹を一生懸命さすっている。　なんだか私は心をむんずと鷲掴みにされてしまった。そうだよね！絶対治る気がするよ！と言いながら、一緒にお腹を「さすさす」した。まひろちゃんのお腹が治ってくれなかったら、私の末端冷え性解消の魔法も解けてしまような気がして…..

　ママ曰く、「そうなんだよね、車ちょっと苦手なんだよねー。でもまあ、慣れてくるから」との心強いお言葉。さすがだ。とりあえず、かっ飛ばして行っちまおう！ということになって動物園を目指した。

「さすさす」に私があまりにも感銘を受けていると、まひろちゃんのママは「うちの子供達は〝さすさす〟大好きだよ。痛いときはなんでもさすさすして〜だし、寝る前は怖い夢見ないようにさすさすして〜だしね」と教えてくれた。うん、私もそう思う、「さすさす」はお化けだって追い払ってくれる気がするよ。

 もちろんまひろちゃんは復活し、その日の万歩計は11キロを記録して仰け反った。

そして、魔法がリアルに変わる理由はお分かりいただけたろうか？

そんな気がしたら….きっと、大丈夫。その選択間違ってない。